人は変化し続ける。10年間で変化した仕事観、パートナーシップ、育児の辛さ。
東京は神田のオフィス街。
その一角のビルのワンフロアはコワーキングスペースになっていて、ビルの外観とは裏腹におしゃれなカフェ風のインテリアで揃えられていた。
入口のドアを開けると中央に大きなテーブルと、窓際には個別の机、作業をしている人がチラホラ。
反対側にはガラス扉の個室が並んでいて、その一部屋でわたしはとある方と待ち合わせをしていた。
実はこの度妊婦さん向けのフリーペーパーの取材の話をいただき、この日は取材のためにライターさんとお会いすることになっていた。
「ライター」という職業の方と会うことは、わたしの人生において数える程もない。
だからちょっぴり緊張していたけれど、はじめましてと挨拶をした瞬間からそのやわらかい佇まいに緊張がほぐれた。
その後もぜんぜん身構えることなくお話することができて、気付くと時間があっという間に経っていた。
すごくいい時間だった。
この取材を通じて感じることがたくさんあった。本当に、たくさん。
その中でも一番大きな気づきとなったのが「人って変わるんだ」ということ。
10年前の自分を語っていて、今とはまるで別人のような考え方、感じ方をしていることに驚いた。
そう、人って常に変化している。
初めての育児をしていた10年前
初めての育児の頃は、今思えば常に「緊張」していたと思う。
産後1ヶ月半くらいで東京の自宅に戻ってからは日中は一人だった。
常に見ていないといけない。わたしが目を離したすきに何かあってはならない。お昼寝中も気が抜けない。そんな毎日だった。
「この子の命はわたしに懸かっている!」と大げさでなく感じていた。
早くこの緊張感と閉塞感から解放されたくて、仕事がしたいと思った。その気持ちをボランティア活動にぶつけた。
時短勤務で平日の育児担当
仕事に復帰してからは、また別のしんどさがあった。
10年前だったからかもしれないけど(今はそうでないと願いたい)、職場復帰の際に「時短・一線から退くコース」か「残業いとわないバリバリコース」かの選択を強いられた。
わたしは迷わず「時短・一線から退くコース」を選んだ。仕事内容自体にあまり情熱は持っていなかったから、それでいいと思っていた。
夫は当時仕事が楽しそうだったから、家庭内ではわたしは「平日の育児担当」を買って出た。朝夕の保育園送迎、1時間半かけて通勤、夕食・お風呂・寝かし付け、病気時の対応、ぜんぶを一人で担っていた。
それで日中の仕事は面白くなかった。心が死んでいたと思う。
「かわいい」がわかった二人目育児。
3年後、娘が生まれた。
今でもよく覚えているのだけど、生後3ヶ月くらいのときにおっぱいを一生懸命飲んでいる娘の口元を見て、はじめて、「かわいい…」という言葉がふわっと浮かんだ。
それまでも口では「かわいい」と言っていたと思うけど、はじめて自分の中で感覚として腑に落ちた。すごくよく覚えている。わたしにもちゃんとそういう感覚があったんだと安心した。
仕事での模索。写真との出会い
仕事の面では現状を打破しようといろいろ模索していた。
その一環で、わたし史上一番堪えたな〜と思えるできごともあった。(これはまだ一度もブログに書いていない。)
けれど同じくらいの時期に写真を再開するきっかけにも出会えた。それが今や生活の中心になっているのだから、人生なにが起こるかわからない。
その後、再び会社に戻るのだけど、今度は平日の育児も夫婦で分かち合うことにした(具体的には、朝の保育園送りは夫。子どもの看病では「どちらが休む?」と相談するようになった)。
スキンシップができるようになった
さらに4年の月日が経ち、次男が生まれた。
「三人目は孫のようにかわいい」とよく言われるが、それに近いものがある。
それまでのわたしはスキンシップが苦手で、子どもにまとわりつかれると「ちょっとやだ」と腕を払いのけていた(本当にヒドイ)。
でも、次男に思いっきりスキンシップしてみたら、「なんだ、できるじゃん。それにめっちゃ幸せ」と感じられた。
それ以来、もう小学生となった長男・長女にもたくさんスキンシップできるようになった。
夫婦ともども会社を辞め、新たな道へ
次男誕生の前年、夫が長年勤めた会社を退職し、新たな道を進み始めた。
夫婦でこれからの生き方を話す中で、「会社に属さないでも生きていける力をつけていきたいね」ってなり、一足先に夫が、その三年半後にわたしが、まったく違う畑へと移った。
何一つ変わらないものはない
こうしてざっと振り返ってみても、環境面、考え方、感じ方、夫婦や子どもたちとの関係性、あらゆるものが変化していったことがわかる。
辛いときって、その辛いことがこの先もずっと続くんじゃないかと思ってさらに絶望に追い詰められる。
自分はこういう人間だから、あの人はこういう性格だから、周りがこうだから。
でも実は何一つ変わらないものなんてなくて、ちょっと自分から動いてみるとあっさり突破できる壁だったりもする。
物事はいつだってよりよい方向へ進めていくことができる。
取材をきっかけにこの10年を振り返ることで、なんだかこれから先の未来にも勇気が湧いてきた。